シャグマアミガサタケの概要
シャグマアミガサタケのカサは、直径3cmから10cm、ツカの長さが2cmから5cm程度でコゲ茶色した球形の塊です。シャグマアミガサタケの肉は表面と同じ色で弾力を感じることができます。過去には、シャグマアミガサタケを食べたことが原因で死亡したケースもあり、非常に毒性が強い毒キノコです。
シャグマアミガサタケの写真
シャグマアミガサタケの季節
シャグマアミガサタケは、北半球温帯以北に分布しており、北海道や本州のマツ、スギ、ヒノキの森や林で見る事ができる毒キノコです。発生は早春から初夏にかけて、もみの木などの針葉樹の林床に発生するキノコです。日本では、スギやヒノキの林内でシャグマアミガサタケが発見されたことがあります。シャグマアミガサタケは基本的に高山地帯に多いです。過去には山梨県の富士山、長野県の浅間山、福島県の七ヶ岳、千葉県の清澄山、栃木県の白根山周辺などで発生しています。シャグマアミガサタケの子実体の組織片を分離源とし、ジャガイモ=ブドウ糖寒天培地や麦芽エキス寒天培地を用いて培養することはいちおう可能であるが、純粋培養した菌株は不安定で死滅しやすい(光条件が菌株の生育に影響を与える可能性がある)。また、生活環において、無性世代は確認されていない。生活様式については、腐生性であるという説と、外生菌根を形成するとする説、あるいはアミガサタケと同様に、周囲の環境に合わせて腐生生活と菌根形成とを随時に切り替えると考える説があったが、最近では腐生生活を営むのではないかと推定されている。
シャグマアミガサタケの有毒物質の特徴
シャグマアミガサタケは、非常に強い毒がある毒キノコです。有毒成分は、ヒドラジン類の一種であるギロミトリンおよびその加水分解によって生成するモノメチルヒドラジンです。ギロミトリンの含有量は、シャグマアミガサタケ 100 g中 120-160 mg程度であるとされている。ギロミトリンの沸点は143℃で、揮発性はないが、沸騰水中ではすみやかに加水分解されてモノメチルヒドラジンとなる。後者の沸点は87.5℃で蒸気圧も高く(20℃において37.5 mmHg)、煮沸すると気化し、調理中にこれらを吸い込むと中毒を起こします。また、シャグマアミガサタケを煮沸した煮汁の中にも溶出する。10分間の煮沸によって、モノメチルヒドラジンの99-100パーセントが分解・失活するという。また、生鮮品を10日間ほど乾燥することによっても、ギロミトリンを90パーセント程度分解できるとされている。
(化学式)ギロミトリンの構造
(モノメチルヒドラジン)
シャグマアミガサタケによる食中毒症状
シャグマアミガサタケを生で食べると7時間から10時間の潜伏期間を経て、吐き気・嘔吐・激しい下痢と腹痛、痙攣などの症状を起こす。重症の場合には肝障害とその結果としての黄疸、発熱、めまい、血圧降下などが現れるとともに脳浮腫とそれに伴う意識障害ないし昏睡、あるいは腸・腹膜・胸膜・腎臓・胃・十二指腸などの出血をきたし最悪の場合には2-4日で死に至ることがあります。シャグマアミガサタケを生食した場合には、モノメチルヒドラジンと結合するとともに、赤血球造成を促進して抗溶血作用を示すピリドキシンが投与され、血液灌流などを併用する必要があります。モノメチルヒドラジンによる造血代謝阻害に対しては、葉酸あるいはフォリン酸の投与(フォリン酸として、一日当り20-200 mg)も行われます。
シャグマアミガサタケの備考
シャグマアミガサタケですが実は学名の「esculenta」の部分は「食用になる」という意味でヨーロッパでは「ロルウェル」の愛称で親しまれ、毒抜きをして食べる事もあるようです。フィンランドではシャグマアミガサタケを「耳キノコ」と呼び、比較的よく知られた食材であり、毒抜きしたものをオムレツ・バターソテー・肉料理などに使うベシャメルソースなどの素材として用いる。また、シャグマアミガサタケの缶詰品も市販されているが、煮沸処理が施されたものとそうでないものとがあるので、缶の記載を精読して確認するべきである。シャグマアミガサタケの毒性の明示と調理法とに関する説明書きの添付とを条件に例外的に販売が許可されています。調理方法は、生のシャグマアミガサタケを大量の水で5分以上沸騰した水で茹でたら茹で汁を捨てて、大量の水で煮汁を洗い落としてから、もう一度5分以上茹でます。乾燥したものは、しっかりと水でもどすために2時間以上水に浸し生鮮品同様に有害物質を煮出す作業を行います。尚、シャグマアミガサタケの有毒物質を煮出す作業中は、湯気に有害物質が含まれるため十分な換気が必要です。この様な手順で、シャグマアミガサタケを食べる事ができますが、処理方法を間違えると毒キノコ食中毒になる危険性が高く十分に注意する必要があります。
食中毒防止のポイント
シャグマアミガサタケみたいな毒キノコによる食中毒を予防する為には、食べる事ができるキノコを確実に判断できない場合には、採らない! 食べない! 売らない! 人にあげない4つが重要です。毎年、知識が無い方が採取した方が食中毒となっております。専門的な知識が無い素人の方によるキノコ狩りは絶対にやめましょう。詳しくは「毒キノコの種類と有害成分による影響」で説明しています。
- わからないキノコは採取しない。
- 他の種類)が混入しないように注意して採取する。
- 昔から言われている「言い伝え」は間違っているので信じない。
- 図鑑などで素人判断はしない。
- 食用でも生の状態で食べたり大量に食べると食中毒になるものがあるので注意。
食べてから症状があらわれる時間(潜伏期間)は短く、キノコ狩りで採取したものをを食べて体調が悪い場合には、直ちに医療機関を受診して下さい。もし、食べた料理等が残っている場合は、医療機関に一緒に持参して治療の参考にしてもらって下さい。下痢や嘔吐の症状は、一般的な食中毒でも同様な症状があります。細菌やウイルスによる食中毒が気になる方は「食中毒(Food Poisoning)」を参照してください。
特に注意したい毒キノコのまとめ
日本国内で発生する種類を一覧形式にまとめました。それ以外の種類についても右の一覧から選んでみてください。毒キノコの名称をクリックすると生息場所、特徴、毒の種類、もし誤って食べたときに現れる症状などをまとめてあります。
毒キノコの名称 | 毒キノコの特徴 |
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カエンタケ |
日本国内で見ることが出来る毒キノコの中でも危険性が高いです。毒性が強く有毒成分3グラム程度で人を殺すことができます。また、触れただけでも皮膚が炎症を起こしますので触れない様にしましょう。カエンタケは、ハイキングコースや公園などの小道の脇でも確認されています。もし、カエンタケを見つけたら触れずに市役所などに連絡してましょう。もし、誤って食べると概ね30分程度で、腹痛、下痢、嘔吐などの消化器系の症状があらわれ、さらに症状は悪化し悪寒、頭痛、手足の痺れ、喉の渇きなどの神経症状もあらわれます。カエンタケに含まれる有毒成分は、エンタケ トリコテセン類(ロリジンE、ベルカリンJ(ムコノマイシンB)、サトラトキシンHおよびそのエステル類の計6種類。 |
オオシロカラカサタケ |
オオシロカラカサタケは、熱帯地方のキノコであり、そもそも日本には存在しないキノコだったと考えられます。以前は、日本国内でも沖縄県や小笠原地方でしか見る事ができませんでした。現在、オオシロカラカサタケは、西日本、東海地方で春から秋にかけてみられる毒キノコです。誤って食べると1地時間から3時間程度で腹痛、下痢、嘔吐などの症状があらわれ、さらに発熱、悪寒、頭痛、痙攣などの症状を引き起こすことがあります。毒素は非常に強く症状も激しいことがありますので注意が必要です。オオシロカラカサタケは、タンパク性毒成分であるモリブドフィリシン、ステロイド類を含む。また、毒成分ではないが、レピオチンA、Bという化合物を含んでいる。 |
アンズタケ |
アンズタケは、夏から秋のはじめにかけてモミ、ツガ類の林内や広葉樹の林内地上に群生する毒キノコ。 正しく処理すれば、食用になり、味にもクセがない。例えば、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉料理の付け合せやカレーの具材として使われる。鹿肉と一緒に食べる伝統料理もある。誤って食べると発症するまでの潜伏期が6~24 時間と長いため、治療が遅 れたり、また、数日後に肝障害が発現するため重篤になるケースが多いです。日本ででの中毒の発生件数は少ないが、きのこによる死亡例の9割はアマ トキシン群のきのこによるものである。アンズタケに含まれるアマトキシンの量は、微量であるが猛毒であるため生食で大量に摂取すると中毒になる可能性もあり避けたほうがよい。 |
ベニテングタケ |
ベニテングタケは非常に可愛らしい赤色に白い斑点があるのが特徴です。しかし、その派手さから毒キノコだと注意されているので誤食による食中毒は、多くは発生していません。夏から秋にかけて抗原のマツなど針葉樹や白樺など広葉樹の地上に発生します。誤って食べると比較的短時間(30分から90分)で下痢、嘔吐、眠気、発汗、さらに、健忘、幻覚、ハイテンションなどの症状があらわれ治療する必要があります。多くの場合は、重症化する事もなく1日程度で回復します。 ベニテングタケに含まれるイボテン酸は、強いうま味成分でもあります。そのた、ベニテングタケを塩漬けにして食べている地域もあります。乾燥したベニテングタケは、毒性が強くなるので食べない様にしましょう。 |
ドクツルタケ |
ヨーロッパではドクツルタケを「死の天使」の異名で恐れられている。初夏から秋にかけて針葉樹林,広葉樹林の地上で見る事ができます。 野生のマッシュルームと見まちがえやすく、海外では食中毒の件数は多い。日本ではあまり食べる人もいないが、 数年に一度は食中毒があり数名が命を落としています。誤って食べると6~24時間後にコレラ様の症状(おう吐、下痢、腹痛)が現れるが1日でおさまり,その後24~72時間で内臓の細胞が破壊され肝臓肥大,黄疸,胃腸の出血などの肝臓,腎臓機能障害の症状が現れ,死亡する場合がある。催吐,胃洗浄,活性炭投与など適切な処置が必要である。ドクツルタケの有毒成分は環状ペプチドで、アマトキシン類(α-アマニチンなど)、ファロトキシン類(ファロイジンなど)、ビロトキシン類、ジヒドロキシグルタミン酸などがある |
テングタケ |
初夏から秋にかけて広葉樹林の地上に発生します。(針葉樹に生えるのはイボテングタケ)。見た目の特徴は、初め半球形で傘が開き、成長すると傘が開き平らになります。テングタケの肉は白色でもろく、味やニオイは特にありません。他にも似た種類がありますので注意しましょう。誤って食べると30分程で嘔吐、下痢、腹痛など胃腸消化器の中毒症状が現れる。そのほかに,神経系の中毒症状,縮瞳,発汗,めまい,痙攣などで,呼吸困難などの症状になり,1日程度で回復するが,古くは死亡例もあります。テングタケに含まれる有毒成分は、イボテン酸、ムシモール、スチゾロビン酸、ムスカリン類、アマトキシン類,アリルグリシン、プロパルギルグリシン150などがあります。 |
ツキヨタケ |
秋にブナの枯れ木上に重なるように群生する毒キノコです。シイタケに色も形もそっくりであるが、誤食するとおう吐と下痢で腰もたたなくなるという。採ってからあまり時間がたたないうちであれば暗闇の中ではひだが青白く光る性質があり、もし不安だったら、きのこを持って暗い所へ入ればわかる。誤って食べると食後30分~1時間程で嘔吐,下痢,腹痛などの消化器系の食中毒の症状が現れる。また、幻覚痙攣を伴う場合もあるが,翌日から10日程度で回復する。症状がひどい場合は、痙攣、脱水、アシドーシスショックなどを起こすこともある。ツキヨタケに含まれる有毒成分には、イルジンS、イルジンM、ネオイルジンなどがある。 |
クロハナビラタケ |
カサの部分が黒くキクラゲの仲間にも見えますが違います。初夏から秋に広葉樹倒木上に発生。多数の裂片の集合体で大きさは約8cmの毒キノコです。これを食べる人はいないと思うけれど、有毒で消化器系の中毒を起こすらしい。誤って食べると下痢や嘔吐など消化器の症状があらわれます。キクラゲの仲間と思い込んで食べない様に注意しましょう。 |
クサウラベニタケ |
夏から秋にかけて、アカマツ混生林下や広葉樹林下で見る事ができる毒キノコです。毒性はそれほど強くないので、 命にかかわるような事にはならないが食中毒をした事のある人の話では、とにかく苦しいらしい。誤って食べると10分から数時間で症状が現れ、神経系および消化器系の食中毒を起こす。 溶血性タンパク,コリン,ムスカリン,ムスカリジンなどコリン、ムスカリジンは消化系に作用すると言われる。ムスカリンは副交感神経を興奮させることで縮瞳、発汗などを示す毒素である。 |
オオワライタケ | めまい、幻覚、興奮(症状は30分~3時間 早めに症状が現れる) |
カキシメジ | おう吐、下痢など(症状は30分~3時間 早めに症状が現れる) |
シャグマアミガサタケ | おう吐、下痢、死亡(症状は6時間経過してから症状が現れる) |
シロタマゴテングタケ | おう吐、下痢、腎臓や肝臓の障害、死亡(6~10時間経過してから症状が現れる) |
ドクササコ | 1ヶ月以上手足の先に激痛(3日~7日と非常に遅く症状が現れる) |
ドクベニタケ | おう吐、下痢、腎臓や肝臓の障害、死亡(6~10時間経過してから症状が現れる) |
ニガクリタケ | おう吐、下痢、けいれん、死亡(30分~3時間 早めに症状が現れる) |
ヒトヨタケ | (酒を飲むと)おう吐、めまい(20分~2時間 早めに症状が現れる) |
間違って食べると大変!猛毒キノコのリスク
日本国内で発生する種類を一覧形式にまとめました。それ以外の種類についても右の一覧から選んでみてください。毒キノコの名称をクリックすると生息場所、特徴、毒の種類、もし誤って食べたときに現れる症状などをまとめてあります。