毒キノコ|クロハツ 毒キノコ|クロハツ

クロハツ|毒キノコ図鑑

クロハツ(学名:Russula nigricans)は、梅雨時から秋にかけてアカマツ、クロマツなどのマツ林やブナなどの広葉樹林の地上に発生する毒キノコです。似たきのこにクロハツやニセクロハツ(猛毒)がある。 クロハツやクロハツモドキは傷つけるとまず赤変し、さらに黒変するが、ニセクロハツは傷つけても赤変するだけである。外見上はほとんど区別がつけがたい時もあるので変色性に注目したい。クロハツの傘は初め中央部がへこんだまんじゅう形で後には開いてじょうご形にそり返る。柄は表面の色は傘とほぼ同色で太くてかたい。クロハツに傷をつけるとまず赤変しさらに時間がたつと黒色に変わります。類似種としては、ニセクロハツ・クロハツモドキ・コゲイロハツタケおよびシロクロハツが知られているが、このうちシロクロハツについては、日本産の標本に基づく詳細な報告はまだなされていない。これらは、いずれもベニタケ属クロハツ節に属するきのこであるが、日本には、この4種以外にもクロハツ節に属する未知種がいくつか分布している可能性が指摘されている。

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クロハツの概要

クロハツの大きさは、カサが直径5cmから12cmです。幼いものは、球を半分にした形状のカサで成長とともに開き中央がへこむのが特徴です。かさは半球形から次第に開き、老成すれば漏斗状に窪むことが多く、湿った時は粘性を示すが次第に乾き、幼時は灰白色〜灰褐色であるが生育に従って黒褐色を帯び、最後にはほぼ黒色を呈し、表皮は剥げにくく、かさの周縁部に条溝を生じない。ひだはほぼ白色あるいはクリーム白色だが、古くなるとほとんど黒色となり、傷ついた部分は次第に赤変し、後にゆっくりと黒変する。肉は堅くてもろく、白色であるがひだと同様の変色性を示し、味やにおいはほとんどない。柄はほぼ上下同大で、一般に太くて短く、表面はほぼ平滑であるがかさと同様の変色性を示し、内部は中実あるいは多数の細かい隙間を生じて海綿状となる。胞子は類球形で無色、多数の微細な疣と不完全な網目状隆起に覆われている。シスチジアは、ひだの縁にも側面にも認められるがむしろ数少なく、通常はこん棒状でその基部はひだの組織の中に深く延びて根状をなし、しばしば先端が鉛筆の芯状に細まり、無色〜淡黄色を呈するが、ヨウ素溶液中で黄褐色〜橙褐色、硫酸バニリン液中では黒褐色となる。かさの表皮はゼラチン化せず、不規則にもつれ合った菌糸(黒褐色の内容物を含む)で構成されており、菌糸の末端細胞は円筒形または先端に丸みを帯びた円錐形である。菌糸にはかすがい連結を持たない。

クロハツの写真

幼いクロハツ|毒キノコ 傘が開いたクロハツ|毒キノコ
クロハツ|毒キノコ クロハツの断面図|毒キノコ

クロハツの季節

クロハツは、夏から秋にかけてブナ科・カバノキ科・ヤナギ科・マツ科などの樹下に発生し北半球の広い地域に分布している毒キノコです。しばしば、ヤグラタケの発生がみられるが、両者の生態学的関係についてはまだ不明な点が多い。

クロハツの有毒成分

かつては食用菌として親しまれていたが、近年加熱しても消えない毒性分があることが判明したために分類が毒キノコに切り替えられた。クロハツの有毒成分は、ルスフェリン,ルスフェノール,カナバニンの他,シクロプロペンカルボン酸が骨格筋の組織を溶解し、その溶解物が臓器に障害を与えることが判明した。生で食べると中毒症状を引き起こし、死亡例も確認されている。

2-シクロプロペンカルボン酸


2-シクロプロペンカルボン酸(Cycloprop-2-ene carboxylic acid)は、分子式C4H4O2を持つシクロプロペン誘導体である。 2008年にニセクロハツの毒成分であることが判明した。 シクロアルケンという歪んだ構造を持つため濃縮された状態では不安定で、爆発的に重合する。このため、薄い溶液として取り扱う必要がある。横紋筋融解症を引き起こし、その溶解物が臓器に障害を与えるが、細胞毒性や抗菌活性は全く示さない。このため筋細胞には直接作用せずに別の生化学反応を起こした結果、筋溶解を引き起こすと考えられている。 マウスに対するLD100 は2.5mg/kg(経口及び腹腔内投与)。

クロハツによる食中毒症状

クロハツを摂取してから食後10~20分程度で嘔吐,下痢などの胃腸,消化器系の症状を示します。その後,縮瞳,言語障害血尿などの症状が現れ,時に心臓衰弱により死亡します。かつては食用菌として親しまれていたクロハツですが、加熱しても消えない毒性分があることが判明してから、それを承知で食べる人はほとんどいなくなった。

備考

猛毒種のニセクロハツに酷似するため、同定には細心の注意を払う必要があります。クロハツは、子実体を傷つけると傷口がまず赤く変色し、その後で徐々に黒変するのに対し、ニセクロハツでは赤く変色したままで留まり、黒色にはならない点で区別されるが、この変色性の強さや速さは、子実体の生長段階の違いや発生環境の条件などによって影響されるため、変色性のみによって両者をはっきり区別することは、しばしば難しいです。

食中毒防止のポイント

クロハツみたいな毒キノコによる食中毒を予防する為には、食べる事ができるキノコを確実に判断できない場合には、採らない! 食べない! 売らない! 人にあげない4つが重要です。毎年、知識が無い方が採取した方が食中毒となっております。専門的な知識が無い素人の方による採取は絶対にやめましょう。詳しくは「毒キノコの種類と有害成分による影響」で説明しています。

  • わからないキノコは採取しない。
  • 他の種類が混入しないように注意して採取する。
  • 昔から言われている「言い伝え」は間違っているので信じない。
  • 図鑑などで素人判断はしない。
  • 食用でも生の状態で食べたり大量に食べると食中毒になるものがあるので注意。

食べてから症状があらわれる時間(潜伏期間)は短く、キノコ狩りで採取したものをを食べて体調が悪い場合には、直ちに医療機関を受診して下さい。もし、食べた料理等が残っている場合は、医療機関に一緒に持参して治療の参考にしてもらって下さい。下痢や嘔吐の症状は、一般的な食中毒でも同様な症状があります。細菌やウイルスによる食中毒が気になる方は「食中毒(Food Poisoning)」を参照してください。

特に注意したい毒キノコのまとめ

日本国内で発生する種類を一覧形式にまとめました。それ以外の種類についても右の一覧から選んでみてください。毒キノコの名称をクリックすると生息場所、特徴、毒の種類、もし誤って食べたときに現れる症状などをまとめてあります。

毒キノコの名称 毒キノコの特徴
カエンタケ|毒キノコ
カエンタケ
日本国内で見ることが出来る毒キノコの中でも危険性が高いです。毒性が強く有毒成分3グラム程度で人を殺すことができます。また、触れただけでも皮膚が炎症を起こしますので触れない様にしましょう。カエンタケは、ハイキングコースや公園などの小道の脇でも確認されています。もし、カエンタケを見つけたら触れずに市役所などに連絡してましょう。もし、誤って食べると概ね30分程度で、腹痛、下痢、嘔吐などの消化器系の症状があらわれ、さらに症状は悪化し悪寒、頭痛、手足の痺れ、喉の渇きなどの神経症状もあらわれます。カエンタケに含まれる有毒成分は、エンタケ トリコテセン類(ロリジンE、ベルカリンJ(ムコノマイシンB)、サトラトキシンHおよびそのエステル類の計6種類。
オオシロカラカサタケ|毒キノコ 
オオシロカラカサタケ
 オオシロカラカサタケは、熱帯地方のキノコであり、そもそも日本には存在しないキノコだったと考えられます。以前は、日本国内でも沖縄県や小笠原地方でしか見る事ができませんでした。現在、オオシロカラカサタケは、西日本、東海地方で春から秋にかけてみられる毒キノコです。誤って食べると1地時間から3時間程度で腹痛、下痢、嘔吐などの症状があらわれ、さらに発熱、悪寒、頭痛、痙攣などの症状を引き起こすことがあります。毒素は非常に強く症状も激しいことがありますので注意が必要です。オオシロカラカサタケは、タンパク性毒成分であるモリブドフィリシン、ステロイド類を含む。また、毒成分ではないが、レピオチンA、Bという化合物を含んでいる。
 
アンズタケ|毒キノコ
アンズタケ
アンズタケは、夏から秋のはじめにかけてモミ、ツガ類の林内や広葉樹の林内地上に群生する毒キノコ。 正しく処理すれば、食用になり、味にもクセがない。例えば、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉料理の付け合せやカレーの具材として使われる。鹿肉と一緒に食べる伝統料理もある。誤って食べると発症するまでの潜伏期が6~24 時間と長いため、治療が遅 れたり、また、数日後に肝障害が発現するため重篤になるケースが多いです。日本ででの中毒の発生件数は少ないが、きのこによる死亡例の9割はアマ トキシン群のきのこによるものである。アンズタケに含まれるアマトキシンの量は、微量であるが猛毒であるため生食で大量に摂取すると中毒になる可能性もあり避けたほうがよい。
 ベニテングタケ|毒キノコ
ベニテングタケ
ベニテングタケは非常に可愛らしい赤色に白い斑点があるのが特徴です。しかし、その派手さから毒キノコだと注意されているので誤食による食中毒は、多くは発生していません。夏から秋にかけて抗原のマツなど針葉樹や白樺など広葉樹の地上に発生します。誤って食べると比較的短時間(30分から90分)で下痢、嘔吐、眠気、発汗、さらに、健忘、幻覚、ハイテンションなどの症状があらわれ治療する必要があります。多くの場合は、重症化する事もなく1日程度で回復します。 ベニテングタケに含まれるイボテン酸は、強いうま味成分でもあります。そのた、ベニテングタケを塩漬けにして食べている地域もあります。乾燥したベニテングタケは、毒性が強くなるので食べない様にしましょう。
 ドクツルタケ|毒キノコ
ドクツルタケ
ヨーロッパではドクツルタケを「死の天使」の異名で恐れられている。初夏から秋にかけて針葉樹林,広葉樹林の地上で見る事ができます。 野生のマッシュルームと見まちがえやすく、海外では食中毒の件数は多い。日本ではあまり食べる人もいないが、 数年に一度は食中毒があり数名が命を落としています。誤って食べると6~24時間後にコレラ様の症状(おう吐、下痢、腹痛)が現れるが1日でおさまり,その後24~72時間で内臓の細胞が破壊され肝臓肥大,黄疸,胃腸の出血などの肝臓,腎臓機能障害の症状が現れ,死亡する場合がある。催吐,胃洗浄,活性炭投与など適切な処置が必要である。ドクツルタケの有毒成分は環状ペプチドで、アマトキシン類(α-アマニチンなど)、ファロトキシン類(ファロイジンなど)、ビロトキシン類、ジヒドロキシグルタミン酸などがある
 テングタケ|毒キノコ
テングタケ
初夏から秋にかけて広葉樹林の地上に発生します。(針葉樹に生えるのはイボテングタケ)。見た目の特徴は、初め半球形で傘が開き、成長すると傘が開き平らになります。テングタケの肉は白色でもろく、味やニオイは特にありません。他にも似た種類がありますので注意しましょう。誤って食べると30分程で嘔吐、下痢、腹痛など胃腸消化器の中毒症状が現れる。そのほかに,神経系の中毒症状,縮瞳,発汗,めまい,痙攣などで,呼吸困難などの症状になり,1日程度で回復するが,古くは死亡例もあります。テングタケに含まれる有毒成分は、イボテン酸、ムシモール、スチゾロビン酸、ムスカリン類、アマトキシン類,アリルグリシン、プロパルギルグリシン150などがあります。
 ツキヨタケ|毒キノコ
ツキヨタケ
秋にブナの枯れ木上に重なるように群生する毒キノコです。シイタケに色も形もそっくりであるが、誤食するとおう吐と下痢で腰もたたなくなるという。採ってからあまり時間がたたないうちであれば暗闇の中ではひだが青白く光る性質があり、もし不安だったら、きのこを持って暗い所へ入ればわかる。誤って食べると食後30分~1時間程で嘔吐,下痢,腹痛などの消化器系の食中毒の症状が現れる。また、幻覚痙攣を伴う場合もあるが,翌日から10日程度で回復する。症状がひどい場合は、痙攣、脱水、アシドーシスショックなどを起こすこともある。ツキヨタケに含まれる有毒成分には、イルジンS、イルジンM、ネオイルジンなどがある。
クロハナビラタケ|毒キノコ
クロハナビラタケ
カサの部分が黒くキクラゲの仲間にも見えますが違います。初夏から秋に広葉樹倒木上に発生。多数の裂片の集合体で大きさは約8cmの毒キノコです。これを食べる人はいないと思うけれど、有毒で消化器系の中毒を起こすらしい。誤って食べると下痢や嘔吐など消化器の症状があらわれます。キクラゲの仲間と思い込んで食べない様に注意しましょう。
 
クサウラベニタケ
夏から秋にかけて、アカマツ混生林下や広葉樹林下で見る事ができる毒キノコです。毒性はそれほど強くないので、 命にかかわるような事にはならないが食中毒をした事のある人の話では、とにかく苦しいらしい。誤って食べると10分から数時間で症状が現れ、神経系および消化器系の食中毒を起こす。 溶血性タンパク,コリン,ムスカリン,ムスカリジンなどコリン、ムスカリジンは消化系に作用すると言われる。ムスカリンは副交感神経を興奮させることで縮瞳、発汗などを示す毒素である。
オオワライタケ めまい、幻覚、興奮(症状は30分~3時間 早めに症状が現れる)
カキシメジ おう吐、下痢など(症状は30分~3時間 早めに症状が現れる)
シャグマアミガサタケ おう吐、下痢、死亡(症状は6時間経過してから症状が現れる)
シロタマゴテングタケ おう吐、下痢、腎臓や肝臓の障害、死亡(6~10時間経過してから症状が現れる)
ドクササコ 1ヶ月以上手足の先に激痛(3日~7日と非常に遅く症状が現れる)
ドクベニタケ おう吐、下痢、腎臓や肝臓の障害、死亡(6~10時間経過してから症状が現れる)
ニガクリタケ おう吐、下痢、けいれん、死亡(30分~3時間 早めに症状が現れる)
ヒトヨタケ (酒を飲むと)おう吐、めまい(20分~2時間 早めに症状が現れる)

間違って食べると大変!猛毒キノコのリスク

日本国内で発生する種類を一覧形式にまとめました。それ以外の種類についても右の一覧から選んでみてください。毒キノコの名称をクリックすると生息場所、特徴、毒の種類、もし誤って食べたときに現れる症状などをまとめてあります。

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